遊備忘録

ここで泥を吐き出すことによって日常生活を保つことができます

勾玉

 

10月28日(金)

 

私のメモには

 

隠と陽

 

と書かれていた

 

私はその時思いついた言葉や考えをメモに残す癖がある

 

 

 

その日の帰り道、電車が遅延していた

 

堺筋本町から天神橋筋6丁目で電車が止まり、乗客が一斉にホームで待たされていた

 

1時間以上待った後、やっと電車がきた。

 

ホッとしたのも束の間

淡路で高槻市駅行きに乗り換える

 

淡路駅のホームが遅延特有の空気感に包まれている

 

そこまではいつものことだ

 

 

京都河原町行きの特急が到着

 

乗客が一斉に押し寄せる

 

すでに80%の電車に40%の人間が隙間をこじ開けて押し入る

 

一番後ろの車両だった

 

私も流れに乗って進んだが、後ろの人間が我こそはと理性を忘れたかのように突っ込んでくる

 

人を平気で押すことを正義かのように猛進する姿は動物だ

 

 

狂っている、と思った

 

 

ホームを見渡すと

そんな姿が嫌になって乗るのを諦めたのは私だけだった

 

 

 

 

その時、女性の車掌さんが

「乗らなくていいんですか!どうぞ!」

 

と最後に空いた隙間へ乗るよう促してくれた

 

 

いいです、と言いかけたが

待ってくれていたので急いで乗り込んだ

 

 

 

 

降りた時、お礼を言いに行った

 

アナウンスで忙しそうだったので会釈だけすると、気づいてくれた

 

「乗れてよかったです!」と素敵な笑顔で言ってくれた

 

 

ありがとうございました、と直接言えてよかった

 

 

 

何気ない行動で泣くほど心が救われる人間もいる

 

 

人間の隠と陽を同時に見た2時間だった

 

 

 

 

追記

イムリーに、その後梨泰院の事故が報道された

 

妙に納得した

 

心が痛い。

被害者やその周りがどうか救われますように

 

 

 

 

人間もバッタとアリと同じなのだ

 

蝗害やデススパイラルを起こしてしまう

 

 

自我ってこんなに脆いものなのか

 

理性なんて存在しているようでしていなかったりして。