遊備忘録

ここで泥を吐き出すことによって日常生活を保つことができます

 

 

好きな人がいる。

 

それはかつて恋愛感情だった。

線香花火に火をつけて、すぐに落ちてしまったような気持ちの揺らぎ。

 

でも今は人として好きだ。

 

私はうまく恋愛が出来ない。

 

 

その人が少しばかり病にかかった。

 

名前のない心の病。

 

強いて言うならば、

自分が透明人間として見える病とでも呼ぼうか。

 

私はその人の苦しみを理解したいと強く思ったり

少しでも減らしたい、と切実に願った。

 

寄り添う、という正しい意味はわからないなりに寄り添うを体現しようと努めた。

 

その人の苦しみは普遍的なものだったように思う。

 

その時の私は、ただそばにいることしかできなかった。

 

 

私よりも近しい人はたくさんいて、

私が全く意味を成していないことは気づかないふりをして。

 

 

ただその人の苦しみを少しでもスプーンですくいたかった。

 

月日が経ち、状況も変わり続け、

その人は今、前よりも少し良い状況にいる

 

きっと私の思いは届くはずもなく、

きっと私と関係なく、元気になった。

 

そして今度は私がその病にかかった。

 

彼に症状を伝えると、

 

「わかる、そんなときあるよね」

 

とだけ返ってきた。

 

私は強欲だった。

 

どこかで「同じものを返してくれるかもしれない」と期待を持っている。

 

 

人の痛みを共有すれば理解し合えると。

 

やっとあの時の痛みを理解できた時にはもう要らなかった。

 

私はいつでも痛みを共有できない呪いにかかっているのかもしれないな、と

ぼんやり歩いた。

 

鼓動に合わせ、ズキズキと痛みをじっくりと味わいながら。

 

 

人は誰しも孤独から免れるなんてできなかったことを思い出した。